大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ラ)606号 決定

記録によれば、原審は、鑑定人吉田省三に命じて本件競売不動産(原決定添付目録(一)記載の宅地及び同目録(二)記載の建物を指す。以下、同じ。)の評価をなさしめ、その評価額金三二五万七、四四〇円をもつて本件競売不動産の最低競売価額と定め、これを競売及び競落期日の公告に表示したことが明らかである。ところで、抗告人が当審に提出した日本不動産研究所横浜支所所属の不動産鑑定士渡辺正男作成にかかる「不動産鑑定評価書」なる書面によると、本件競売不動産の評価額は金一、二〇〇万円となつており、両者を比較するのに、評価の時点に四カ月足らずの違いがあることを考慮にいれても、前者は後者の約三、七分の一にすぎず、しかも、前者の評価書にはその価額算出の根拠が明確にされていないのに対し、後者の評価書には、その理由として、宅地については、「近隣の取引事例価格を事情補正し時点修正した価格」、「近隣同類型地の当所評価先例標準価格を時点修正した価格」、「固定資産評価格の倍率による推定価格」及び「精通者の一般時価」を調査し、これらの資料から一平方メートル当りの単価を査定し、また、建物については、復成価格を算出し、これに残存耐用年数による減価修正を施して一平方メートル当りの単価を査定し、宅地の価格と建物の価格との合計額をもつて本件競売不動産の評価額とした旨の記載があり、その評価は、一応、措信し得るものと認められる。

おもうに、競売不動産についてその真価を適正に把握することは容易な業ではなく、競売法も、裁判所が適当と認める鑑定人に命じて評価を行なわせた以上、その結果を妥当なものと認めて採用するかどうかは、当該競売裁判所の自由な判断にまかせているのであるから、裁判所の命じた鑑定人の評価が実価と一致しないことがあるとしても、かかる一事をもつて、競落許可決定を取り消すべき異議事由があるものと即断することは許されないというべきである。しかし、本件におけるごとく、その不一致の程度がはなはだしく、しかも、その金額も高額に達する場合には、かかる評価額の公告をもつてしては、最低競売価格を定め、それを公告させることによつて可及的多くの人々に競買申出の機会を与えるとともに当該競売不動産が不当に安価に競落されることを防止し、もつて債権者の満足と債務者の利益の保護を図らんとする法の要請を満たしたものとはとうてい認められないので、結局において適法な最低競売価額の公告がなかつたものとして、同法三二条二項によつて準用される民訴法六八一条二項、六七四条二項、六七二条四号所定の競落許可決定に対する異議の事由があると解するのが相当である。

(浅沼 上野正 渡部)

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